![]() | 弥勒世(みるくゆー) 上 (2008/02/21) 馳 星周 商品詳細を見る |
久々の読書感想文です。やっと読めたぞ馳さんの新刊(もはや新刊じゃないか/汗)
今回の話は沖縄が舞台。馳さんも昨今の沖縄ブームに乗りましたか! なーんて軽いノリでは決して無く、沖縄は沖縄でもまだ米国占領下にあった頃の話。返還間際の沖縄県民の感情を、馳さんらしい視点で抉ってます。
この本は沖縄の歴史の悲惨さを、知識として与えるのではなく、骨肉に知らしめてくれます。読前と読後には沖縄に対する、というか、自分達が住んでいる日本という国に対する見方が変わると思います。
本の帯に馳ワールドの新境地とありましたが、これは本当に新境地だと思います。ジャンル的にはノワールというより近代史ものかな。でも以前からの黒々とした馳ノワールが好きな方も、勿論それ以外の方も、絶対満足出来る本だと思います。
以上、一般向けな感想文でした。こっからは馳星周さんのファンとしての、偏見にまみれた感想文となります(笑)
![]() | オン・ザ・ロード (世界文学全集 1-1) (世界文学全集 1-1) ジャック・ケルアック (2007/11/09) 河出書房新社 この商品の詳細を見る |
退屈な「知識人」に囲まれたぼく──作家を生業とする主人公、サル・パラダイスの元に、狂気をたずさえた男がやってきた。その名前はディーン・モリアーティ。サルは彼の奔放な魂に惹かれ、いつしか二人でアメリカ中のロードに立つことになった。
これは非日常から戻れなくなってしまった者の話です。ハッキリいって今の私の立場から見れば、両手を叩いて彼等のような人間を身近にむかえる事は出来ない。それでも彼等のような生き方には憧れるし、ディーンのような「狂気」が欲しいとさえ思います。
でも彼等のような人間は、私のように心を解き放てない人間にこそ必要なのかもしれない。その自由と奔放さに羨望し気持ちを洗われ、しかし同時に道化を見る哀れみの目をもって、せめてもの自己正当化を計れるのだから。
といっても、実際この本を読んでいて最初に思い出したのは、大学で山を始めて、5月の後立山連峰で生まれて初めて白銀の峰々に足を踏み入れた時の感動。あの時はこんなにも圧倒的な存在感を持つものが、この世にあったのかと、ただただ驚くしかなった。
またそれと似たような気持ちを、同じ大学時代、アメリカに留学した時にも感じた。ネバダ周辺の国立公園と、せいぜいカリフォルニアまでの短いドライブだったけど、それだけでもアメリカの広大さは嫌と言うほど感じた。やっぱ「大陸」って凄い。
この世界は何だかんだ言っても、とてつもなく広い。その認識は、本の知識や話だけじゃ理解出来ないレベルにある……絶対に。そういう意味では、やはり旅はいいと思う。
最後に。だれしも自分は世界の一部を成す特別な存在だと思っていて、そのうちにそんなものは幻想で、自分の存在など生命の営みの偶然の産物程度にすぎないと気付くときがある。そんな自分の魂との戦いが始まる時に、この本を読むといいかもしれない。
世界は広いんだ。自分はいつでも自由になれるんだ。必要な時には、何者にでもなれるんだという自信が持てるかもしれない。そういった気持ちは私にとって、今のところかなり武器になっている……と思う。
![]() | キューバ・リブレ (小学館文庫 レ 1-2) エルモア・レナード (2007/11/06) 小学館 この商品の詳細を見る |
都会派クライム・ノベルの巨匠が描く、1898年の混乱期のキューバを舞台にした歴史冒険ロマン。本作は1998年にアメリカで出版され、翻訳は本邦初。訳はレナード作品を他にも数多く手掛けている高見浩さんで、安心して読めます。
主人公はニューオーリンズ出身のカウボーイ、ベン・タイラー。一本気で男気溢れる性格ながらも、どこかすっとぼけてます。彼には銀行強盗の前科があるのですが、その強盗の理由が素晴らしい。理屈じゃなく、筋なんだな。
物語はタイラーが大富豪ブドローの愛人、アメリアとの運命的な出会いを軸に急展開。そう、相変わらずレナードの小説は展開が予測できない。今回も主人公がいきなり投獄されちゃうしビックリ! 本当に最後の結末まで、誰が生き残って誰が勝つのかが分からない。
可愛いだけじゃないヒロイン、アメリアも良いです。彼女は物語が進むにつれ、どんどん好きになったな。また食えないと言えばビクトール。その狡猾さと老獪さが、とにかくたまらないジイさんです。
クライマックスには胸のすく銃撃戦も見せてくれます。そしてラスト、主人公側が完全な勝利を納めた訳ではないけれど、まあ、ありかな? 愛を手に入れ、金は逃したって感じか。タイラーの言葉の様子では、まだ金も諦めている様子では無かったけどね(笑)
レナード作品は主人公が犯罪者であれ、警官であれ、ある意味「勧善懲悪」の世界で気持ちいいです。あっと驚く意外な結末でありながらも、こうでなくっちゃ! と思わせるものがあるよね。そんな訳で久々のレナード、存分に堪能しました♪
ちなみにエルモア・レナードは私が好きな作家、東山彰良氏や、映画監督のクエンティン・タランティーノ氏が愛する作家でもあります。そう、いわゆる私の好む世界です(笑)
以下、私信になります。
![]() | TOKYO YEAR ZERO デイヴィッド ピース (2007/10/11) 文藝春秋 この商品の詳細を見る |
戦後の混乱期にある日本で、実際にあった「下山事件」をベースに書かれたもの。ミステリーではありますが事件そのものの謎解きでは無く、テーマは敗戦後の日本警察の闇。ちなみにこの作品は三部作の一作目で、続編は2008、2009年にそれぞれ刊行予定。
色々な意味で凄かったです。まず舞台はタイトル通り「東京」であるのですが、本書の中にある東京は、私の意識の中にある東京とは全く別物です。とても今の日本からは想像出来ない。物語の背景となる時代が1946年……敗戦一年後と、まだ日本がGHQの占領下にあった頃なので当然といえば当然なのですが。
でも本書ではそういった認識以上に、日本にもこういう時代があったのだと、リアルに感じる事が出来ます。戦後の飢餓と貧困に喘いでいた頃の日本を、鬼気迫るとしか言い様がない文体で描写しています。その後の日本に現れてくる、人種差別や裏社会の形成の下地を臭わせます。これは歴史を感覚で理解させてくれます。
その文体がこれまた凄い。何度も繰り返される同じフレーズ、動作が完了されぬまま次の動作を重ねていくような独特の文章。幻想的でありながら、先へ先へと焦燥感を煽られる。粘着質で不気味な恐怖にジワリジワリと周囲を取り囲まれ、じょじょに追い詰められていく。そしてラストは一気に足場が瓦解して「真実」という奈落の底へ……。
読んでいる途中、この作品の世界観に取り込まれ、しまいには悪夢まで見る始末。読んだ本のせいで夢にうなされるのって、夢野久作の『ドグラマグラ』を読んだ時以来だわ。
もうそれだけでも読んだ価値あったなという感じなんですが、この作品はあくまでもミステリー。その「謎」に関してはかなり手強い仕掛けが!!
とにかくビックリな本でした。手強いですが面白かったです。ただ物語の起伏があまりないのと猟奇的な描写が続くので、好き嫌いは別れるかな……。
![]() | ピアノ・ソナタ (創元推理文庫) S.J. ローザン (1998/12) 東京創元社 この商品の詳細を見る |
警備会社を営むボビー。その会社に勤める彼の甥が、深夜警備の勤務中に何者かに殺された。警察はそれを地元のギャングによるただの無差別殺人として片付けようとした。しかしそれでは納得のいかないボビーは、かつての「教え子」ビルに事件の真相を探るようにと依頼する。
少し間が明きましたが「リディア&ビル」シリーズ第二弾の感想です。このシリーズはリディアとビルが巻ごとに主役を交代するのが特色で、今回はビルの視点でストーリーが進められていきます。それにより『チャイナ・タウン』では語られなかったビルの暗い過去、繊細な一面が明らかに!
老人福祉と孤児救済。死に行く人間と未来のない子供たち。国や州は一体どちらに金をかけるべきなのか? ううん、ここでもやはり問題は二元論か。そんな訳で話のテーマは難しく、決して明るいものではありません。それでもラストにはどことなく明るい希望があります。
そして最後にビルがチェイクンに語る言葉──「全部明るみに出せば、あなたの良心はすっきりするかもしれないが、それ以外の人間の役に立つとは思えない」。そう、それこれが真理って奴でしょう。
この世の中には正直が人を殺す事もあるし、嘘が人を救う事もある。良心に従うという事は確かに美徳かもしれないけど、場合によってはエゴにしかならない時もある。うーん、難しい。
最後に。今回の話でビルの魅力が増したのはいうまでもありませんが、それ以上に魅力を増したのはリディアでした! ビルから見たリディアは、彼女自身が認識しているよりも大人で思慮深い女性に映っているようです。最後にお得意のテコンドーもお披露目。かっこいいです!
そして! 次の3作目はまたリディアが主役ですね。残りのシリーズ4冊、注文済みです。ワクワクして本が届くのを待っております^^
PS:以下私信です。
Kさま、何とかレビュー復帰させました。遅くなってスイマセン↓ メールいつでもお待ちしてます。本の話、大歓迎です。また色々と教えて下さい。







