![]() | 約束の地で 馳 星周 (2007/09) 集英社 この商品の詳細を見る |
昨年の『ブルーローズ』以降、待ちに待った馳さんの新刊です。今回は5作の連作短編からなる短編集。各々独立した5話でありつつも、その登場人物の人生が少しだけ重なっているという感じです。
そしてそのどの作品も、今までの馳さんのイメージとは違ったものでした。ヤクザも出てこなければ、誰も大金を掴まないし、違法銃をぶっ放したりしない。
いや、良く考えれば、主人公は大金を目の前にしたり、警官を殺して銃を手に入れたりはしているか。でも何というか、普段の馳ワールドだったらそこから発展していくストーリーが、別の方向へ進んでいるって感じかな。まぁ、そこは読んでみてのお楽しみで。
後はちょっと不謹慎だけど、やっぱり馳さんの官能表現はいいなぁ、なんて思ったり。どうして男なのに、こんなに女性心理を上手く掴んでるのかな? 他の作品でもそうですが、馳さんの書く男って、ろくでなしの最低野郎なのにセクシーなんですよね。
個人的には4作目の『雪が降る』が切ないラブストーリーって感じで好きです。印象深かったのは、2作目の『みゃあ、みゃあ、みゃあ』だけど。ああいう静かな湿った憎悪って、一番怖いよ〜。
ところで馳さんと言うと日本を代表するノワールの書き手という事で、どうしても小説の内容の凄惨さばかり取り沙汰されますが、文章も凄く上手い作家です。大げさな比喩は無く、短文でグサリとくる言葉。イメージを強く喚起させる表現。大好きです。
そんな訳で久々に馳さんの文章を堪能出来て大満足です。が、余計に氏のガッツリとした新作が読みたくもなってしまいました。新境地も良いですが、『ダークムーン』のようなノワールは、もう書かないんでしょうか……。
![]() | 強盗こそ、われらが宿命 上 (1) (ヴィレッジブックス F ホ 7-1) チャック・ホーガン (2007/09) ヴィレッジブックス この商品の詳細を見る |
ボストン屈指の犯罪都市チャールズタウン、強盗の住処。そこで生まれ育ったダグは盗みを生業とする生来のアウトローであったが、クレア──彼女はダグが襲った銀行の支店長であった──と出会った事により、そんな自分の人生を心から変えたいと願うようになる。しかしダグの強盗仲間の一人であり、それこそ兄弟のように育った幼馴染のジェムには、それは彼の裏切りにしか思えず……。
弾を込めた銃を見てもぞくぞくしなくなってから、長いこと経つ──『強盗こそ、われらが宿命』の一節より。
うーん、渋い、渋いなぁ。これはヤバいですよ、ストーリーもキャラもめちゃくちゃ良いです。悪党と市井の女の道ならぬ恋。仲間との友情。報われない愛への確執、そして裏切り──定番だけど、萌えるシチュエーション。何たって原題が『PRINCE OF THIEVES(盗賊の王子)』ですから。かなり心動かされる物がありますでしょ? 私好みです(笑)
メインテーマとなるダグとクレアの愛は勿論、FBI捜査官フローリーとの対決。ダグとジェム、ダグとデズのそれぞれの友情の形。いや、ダグとジェムに関しては友情というより、憎んでいても縁を切れない肉親同士の関係か。そして初っ端の銀行強盗シーンから、最後の大仕事まで、都合3回も見せてくれる彼らの仕事ぶりに大興奮。
またジェムが妹クリスタの娘のために、自分の家の模型を作る姿が哀しい。その何気ない一行、一文にグッと来る。感情が込みあがってくる。なぜ自分はこういった犯罪小説が好きなのか、その理由を思い知らされる。ジェムもダグも、切ない。人生が、正にその命の燃やし方が、悲しく遣る瀬無い。
ラスト、凄まじいです。ジェムがカッコいいです。賛美両論あれど、あれぞ悪党の最後では。そして全てが決着し終息した後で、再び初めのシーンに回帰する。仕事の前の楽しげな4人──ダグも認めていた、一番楽しい時間。その演出に泣かされました。
最後にこの作品は2005年にハメット賞を受賞し、現在はワーナー・ブラザーズで映画化が進行中、2008年に公開予定となっています。上下巻合わせて700ページを超える大作ですが、何の苦もなく一息に読めてしまいます。これは良いです、買いです。声を大にしてお薦めします!
![]() | チャイナタウン (創元推理文庫) 直良 和美、S・J・ローザン 他 (1997/11) 東京創元社 この商品の詳細を見る |
舞台はニューヨークのチャイナタウン。探偵業を営むリディアは、美術館に勤める学生時代の友人ノーラから、盗まれた磁器を探して欲しいと依頼を受ける。リディアは同じ探偵で友人のビルと共に捜査を開始。だがそこに殺されたチャイニーズギャングの真相までもが絡んで来て……?
お客さまにご紹介頂いて、ネット注文していた本がやっと届きました。読む前からかなり楽しみにしていたのですが、もう期待以上に良かったです。一晩で一気に読んでしまいました。教えて下さったお客さま、素敵な本を紹介して下さり本当に感謝しています!!
とにかく主人公のリディアが良い。彼女はテコンドーの使い手でS&Wの38口径も持ってる。だけどスーパーヒロインじゃない。3人ものギャングに囲まれればやはりコテンパンに負けてしまう。それでも彼女は顔を腫らしながら、更なる捜査に踏み出していく。
『リディア・チンをこんな目にあわせると、ただではすまないと思い知らせてやる』──ううん凄い! これぞハードボイルド。カッコイイよ、リディアさん!
で、そんなリディアとビルの関係がこれまた素敵! リディアにぞっこんで、隙あらば口説こうとするビル。その口説きには素直に応えられないけど、本当はビルに惹かれているリディア。そんな二人が交わす軽口にはユーモアだけじゃなく、互いへの信頼と思いやりが溢れていて優しく切ない。大人だからこそ出来る「初々しい恋愛」って奴ですね。
ラストも良いです。万々歳の大団円という感じでは無いですが、シリーズものの一作目としてリディアの今後の成長を予感させます。そう、リディアはまだまだ完璧じゃない。そこが良いところ。これまでも女探偵ものは沢山読んできましたが、このように等身大の東洋人女性が主人公というのは初めてで、凄く新鮮でした!
また今読んでいるシリーズ二作目では、視点がビルに変わっています。リディアは彼のサポート役になり、彼の目から見たリディアがまた魅力的です。内容もまたガラリと変わってます。こちらも良いです。一作目以上に夢中になってます。
![]() | HUNTER×HUNTER NO.24 (24) (ジャンプコミックス) 冨樫 義博 (2007/10/04) 集英社 この商品の詳細を見る |
amazonで予約してた『HUNTER×HUNTER』24が、昨日の夕方やっと届きました!!
本誌掲載からコミックになるまでの時間が長かった分、また新鮮な気持ちで読めました。こまかい内容は私などが書かずとも、ここに来るお客さまなら分かってらっしゃるでしょうから書きません。まだ読んでないコミックス派の方のネタばれになっても嫌だしね。そんな訳で個人的な感想だけ述べますが、面白さ凄まじさ共に臨界点です!
基本的なストーリーの面白さは勿論のこと、巧みな心理描写が見せる人物のリアリティさ。そしてやはり私にとってのハンター最大の魅力は、ノワール(悪)の存在を肯定した世界観だと再認識。キメラアントの純粋な残酷さに比べると、人間サイドのエゴの方が醜く見えてくる。その辺を少年誌で容赦無く書いてるのが、冨樫氏の凄さかなぁと。
だけど勧善懲悪が基本のジャンプの中では、その世界観を貫くのは難しいでしょうね。これからの展開どうなるか分かりませんが、どうか冨樫氏が本当に書きたい話を見せて欲しいです。別に少年ジャンプじゃなくて良いからさ。いや、寧ろ青年誌に移行して更なるノワールを見せて欲しいくらいですわ(笑)
そして本日、いよいよ連載再開ですね!! 明朝、コンビ二に走ります^^
でもって以下、ちょっと問題発言? 心の広い方のみドウゾ↓
ここ2、3年はご無沙汰してた作家ですが、最近になって未読の著作を二冊ほど購入。『ロックンロール・ウィドー』と『復讐はお好き』の2冊。久々のハイアセンでしたが、やっぱり面白かった。そんな訳で二冊まとめてご紹介♪
まずは『ロックンロール・ウィドー』から。主人公は新聞社に勤めるジャック・タガーという中年男。そこで死亡記事欄を担当していた彼が、かつて一世を風靡したロック歌手ジミー・ストマの死に興味を持った事から話が始まる──。
この作品は主人公の一人称視点で物語が進められていきますが、それが見事にストーリーを面白くしています。皮肉屋でユーモアたっぷりのジャックの語りがとにかく最高に可笑しい。
ジャックが天敵としていた年下の女上司エマとの微笑ましい恋愛や、ジミーの悪妻クリオと彼女を取り巻く面々とのやり取りも見所。特にお気に入りなのは「冷凍トカゲ」のエピソード、ホント爆笑です!
次に『復讐はお好き?』──こちらの主人公はジョーイ・ペローネという女性で、結婚記念日の旅行中にろくでなしの夫に大型客船から海に突き落とされ、殺されかけた悲劇のヒロイン。しかし元水泳選手だった彼女の逞しさは悲劇のヒロインになる事を拒み、夜の暗い海から生還。そして逆に夫への仕返しを目論む。
ハイアセンの小説の登場人物たちはいつもどこかぶっ飛んでる奴らばかりなのですが、この小説も典型的。ヘビを飼ってる敏腕刑事や、道ばたの交通事故を悼んで立てられた十字架を集めるボディガードなどなど。
またジョーイのパートナーとなるミックも、世捨て人ながら中々のユーモアの持ち主。ミックがジョーイの夫チャズに、ジェリー・ルイスの物真似で脅迫電話をかけるシーンが大好き。
カール・ハイアセンを一言で言うと、正にアメリカン・コメディといった感じ。個性的な登場人物に、息もつかせぬジョークとユーモア。ミステリー要素は多分に含みながらも、眉間に皺を寄せて読む類いの本で無いことは確か。
またハイアセンのキャラクターが魅力的なのは、ただオモシロオカシイというだけでなく、彼等が逆境に置いてもユーモアを忘れずにいる所じゃないかなと思うのです。自分の身の危険さえも冗談のネタに出来てしまうようなタフさってやっぱ爽快。
未読の方は是非チャレンジしてみて下さい。直球の笑いと、魅力的なキャラクターがたっぷり。元気を貰えること請け合いです。
![]() | ロックンロール・ウイドー (文春文庫) カール ハイアセン (2004/12) 文藝春秋 この商品の詳細を見る |
まずは『ロックンロール・ウィドー』から。主人公は新聞社に勤めるジャック・タガーという中年男。そこで死亡記事欄を担当していた彼が、かつて一世を風靡したロック歌手ジミー・ストマの死に興味を持った事から話が始まる──。
この作品は主人公の一人称視点で物語が進められていきますが、それが見事にストーリーを面白くしています。皮肉屋でユーモアたっぷりのジャックの語りがとにかく最高に可笑しい。
ジャックが天敵としていた年下の女上司エマとの微笑ましい恋愛や、ジミーの悪妻クリオと彼女を取り巻く面々とのやり取りも見所。特にお気に入りなのは「冷凍トカゲ」のエピソード、ホント爆笑です!
![]() | 復讐はお好き? (文春文庫 ハ 24-2) カール・ハイアセン (2007/06) 文藝春秋 この商品の詳細を見る |
次に『復讐はお好き?』──こちらの主人公はジョーイ・ペローネという女性で、結婚記念日の旅行中にろくでなしの夫に大型客船から海に突き落とされ、殺されかけた悲劇のヒロイン。しかし元水泳選手だった彼女の逞しさは悲劇のヒロインになる事を拒み、夜の暗い海から生還。そして逆に夫への仕返しを目論む。
ハイアセンの小説の登場人物たちはいつもどこかぶっ飛んでる奴らばかりなのですが、この小説も典型的。ヘビを飼ってる敏腕刑事や、道ばたの交通事故を悼んで立てられた十字架を集めるボディガードなどなど。
またジョーイのパートナーとなるミックも、世捨て人ながら中々のユーモアの持ち主。ミックがジョーイの夫チャズに、ジェリー・ルイスの物真似で脅迫電話をかけるシーンが大好き。
カール・ハイアセンを一言で言うと、正にアメリカン・コメディといった感じ。個性的な登場人物に、息もつかせぬジョークとユーモア。ミステリー要素は多分に含みながらも、眉間に皺を寄せて読む類いの本で無いことは確か。
またハイアセンのキャラクターが魅力的なのは、ただオモシロオカシイというだけでなく、彼等が逆境に置いてもユーモアを忘れずにいる所じゃないかなと思うのです。自分の身の危険さえも冗談のネタに出来てしまうようなタフさってやっぱ爽快。
未読の方は是非チャレンジしてみて下さい。直球の笑いと、魅力的なキャラクターがたっぷり。元気を貰えること請け合いです。








